ノロウィルスについて調べてみた

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 これから冬が近づいてくるにつれてヘルスケアで気になるのがノロウィルスによるウィルス性食中毒です。激しい嘔吐や下痢や腹痛が特徴で、しかも一度発症すると広範囲に感染します。幸い重篤な脱水症状にはならないので、健康な成人ならばよく吐き下しのある風邪かなと思う程度の症状で済んでしまいますが、抵抗力の弱い高齢者が発症すると嘔吐物をのどにつまり命を奪うことも珍しくないので、介護施設での流行がニュースでもしばしば取り上げられます。
ノロウィルスによるウィルス性食中毒は発症すると直接治療する薬は存在しないので、吐き気や下痢を抑える対処療法的な薬を使いながら体力が回復して症状が治まるまで安静にしているしかありません。
でも、昭和の頃は食中毒といえば初夏が一般的だったことを記憶されている方も多いと思います。では、なぜノロウィルスによるウィルス性食中毒症は冬に流行するのでしょうか?

牡蠣を通じて見るノロウィルスの感染経路

 ウィルス性食中毒の発生源として有名なのは何と言っても牡蠣(かき)です。冬は牡蠣が美味しい季節で、生食も盛んですが、牡蠣は1日200リットルと大量の海水を飲みこんで、水中のプランクトンを取り込み捕食するため、下水道から放出された下水の中の病原体となるウィルスを取り込んでしまいます。
取り込まれたウィルスは牡蠣の内臓に蓄積されます。一度牡蠣の内臓に蓄積されたウィルスは、加熱殺菌しないで生食する限り、ただ洗うだけでは除菌できません。
もちろん従来の細菌性食中毒の原因となる細菌も患者の排泄物を通じて下水に混入する可能性もあるわけですが、その病原体となる細菌は水の中を長時間生きることができず、しかも下水道では放出する前に必ず滅菌処理を行うので、病原体となる細菌は死滅します。これが下水道が普及した先進国で細菌性食中毒が激減した大きな理由です。
しかしノロウィルスの場合は水中でも長時間生きることができ、しかも経口でごく少量で発症する特性を持っています。
どれくらい少量で発症するかというと、1万分の3mm程度のノロウィルスが、たった10個~100個程度入っただけで発症します。シャープペンシルの先ほどの感染した患者の便で10万人発症するとの計算もあります。そのくらい少量で発症するため、病原体となるウィルスを下水道で完璧に消毒できる技術は現在存在しません。
そのため牡蠣の生食でウィルス性食中毒を完全に防ぐことは不可能と言ってよいです。生食用と称して販売されている牡蠣では、下水の流入のチェックなど厳密な管理と監視の元に養殖されていますが、それでも100%安全ではありません。だから、食品を扱う企業の中にも、社員に牡蠣の生食を社則で禁止しているところもあるほどです。

人から人への感染

 ここまでは食物から人への感染ルートを説明してきましたが、ノロウィルスの場合は食物の中では繁殖できません。ここがウィルスと細菌の大きな違いで、赤痢やO157のような細菌性食中毒の原因となる細菌は食物の中で繁殖して流行するのですが、人間に感染するウィルスは人間の力を借りてはじめて繁殖できるのです。だからノロウィルスは人間の体内でしか繁殖できません。
それにいくら牡蠣がおいしいシーズンの冬でも、牡蠣を生食をすることは日常限られた場合だと思います。
だからウィルス性食中毒は、その流行時においても食物から直接感染する患者はごく一部です。感染経路から見れば最初の感染者こそ食物由来ですが、一度発症すれば、それ以降は人での体内での繁殖の結果、吐物や糞便を通じて体外に大量にウィルスが排出され、それ経由で別の人へ広がっていくケースの方が感染経路としては圧倒的に多いのです。
でも、病院でもない限り感染源になりそうな他人の吐物や糞便を目にすることなどありえないから、自分は感染しないと思いがちですが、実はそうではありません。
先に書いたようにこれらのウィルスはごく少量でも発症し、しかも空気中の乾燥状態の中でも長時間生きるので、わずかな飛沫でも微粒子となって空気に乗って感染します。
たとえばホテルの宿泊客が発症し症状が重くて床の上に嘔吐したために、それがもとでホテル全体に発症者が出たという事例が報告されています。嘔吐物が空気中に飛び散ったために経口で他の宿泊客に感染したのですね。
ちなみに微粒子上になったノロウィルスは、インフルエンザウィルスと同様に気温と湿度が低いほど空気中での生存時間が長くなり、これがウィルス食中毒が冬に流行する理由の一つになっています。

人から人への感染 トイレを通じて

 ウィルス性食中毒の感染源で最も有力なのがトイレで、特に危険なのが便座です。
発症すると体内で増殖したノロウィルスは水状便で体外に排出されます。しかも、下痢の症状が治まっても、しばらくウィルスは体内で増殖し、便を通じて排出され続けます。中には感染しても発症せずに体内で増殖して便を通じて排出される例も多くあるそうです。そうして排出されたウィルスは飛沫となって便座に付着します、
また吐き気を催した場合もまずトイレの便器で嘔吐することになると思いますが、その際の吐物にもウィルスが含まれていて、その飛沫が便座についてしまいます。
そんな便座に座ることで直接おしりの部分に触れて、そこをさわったりフタや便座の上げ下げなど指で何かと接触することが多いです。また、直接指で触れたりしなくても、その指が触れたドアノブや水道の蛇口を通して指に付着し、なに気ない動作を通じて口へと運ばれて行き、発症に至ります。

予防のためにはまず手を洗う

 ノロウィルスのようなウィルス性食中毒を防ぐには、まず外出先から帰った後はもちろん自宅のトイレを使った後でもよく時間をかけてハンドソープをつけて手を洗うことが一番です。手を洗うこと自体やハンドソープは効果は殺菌というよりも手に付着した菌を落とすことにあるようです。
ただ、トイレの後もトイレットペーパーを使うため指先だけ洗えばいいと思いがちですが、本当に注意しなければならないのは、指の付け根や手のひら、指の腹の部分、手の甲、指の背の部分、指の間やつけ根のところもよく注意して洗わなければいけません。これらの部分はトイレットペーパーを使う際に、無意識におしりに触れてしまうからです。おしりは先にふれたように便座に座ることで、ウィルスの含まれた微粒子が付く可能性が強いのです。だからこれらの部分も注意して時間をかけて洗ってください。

汚物の取り扱いとハイターでの消毒

 ノロウィルスで一番危険なのは、感染者の糞便や吐物で汚染された物の取り扱いです。これらは大量にウィルスが含まれているため、そのまま洗濯機に投げ込むような不用意に取り扱いを行うとあっという間に感染が拡大します。一番いいのは廃棄することですが、それもできない場合は消毒します。ただ消毒によく使われる濃縮アルコールはノロウィルスには無効で次亜塩素酸ナトリウムを使う必要があります。
次亜塩素酸ナトリウムは一般に販売されているハイターのような塩素系漂白剤として入手できますが、同じように売られているワイドハイターのような酵素系漂白剤はノロウィルスには無効なので注意してください。塩素系漂白剤を市販の漂白剤(塩素濃度約5%)を250倍に希釈してノロウィルスの対策の消毒剤を作ることができます( 例:5Lの水に漂白剤を20ml入れる)。そしてこの消毒液に浸すことでノロウィルスの消毒ができます。なお、その際、注意するのは消毒に使った道具を通じて感染することもあるので、破棄するか消毒してください。また換気を十分に行ってください。
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